緩やかな記憶 2

通夜の席であって以来、なぜか連絡しにくかった。
いつものメンバーが再会することになった。
【売れ残ったらもらってやる】と言ってくれた友人が結婚する。

その披露宴で再会するのだ。





早めに集まり、ホテルの喫茶店でおしゃべりを始めた。
一人が私に【おまえ、アイツの夢、みたか?】と、聞いてきた。

あれからしばらくの間、毎日、毎日考えた。
でも夢には一度も登場しなかった。

彼が亡くなってから半年くらい経った冬の朝。
地下鉄の階段を上っているとき、彼に呼び止められたような気がした。

振り返ってもあるのは頭、頭、頭。

その空耳がきっかけだったのか、
その日初めて彼の夢を見た。

大きな鞄を持って立っている。
【どうしたの?】
【いや、そろそろ行かなくちゃいけなくて】
【なんで、あんな……】
【いや、あれは事故なんだ……】

彼の夢を見たか?との問いに
私は【見たよ】と、その一部始終を語った。

友人は【いいか、おまえ、泣くなよ】と前置きをして、こう続けた。

【みんな同じ夢を見ている】

泣かないではいられなかった。
本当に挨拶に来ていたんだと思った。

友人4人と私と、彼のお父さんが、同じ頃に同じ夢を見ていた。
スーツケースだったり、ボストンバッグだったり。
その形態は違うけれど、鞄を持っていた。

そして、謝っていた。

お父さんから夢の話を聞いたお母さんは
【夢にも現れない。私のところへは来ない】といって泣いたそうだ。

彼の死は自殺だった。
なぜ?をずっと私たちは引きずっていた。
事故であってほしいという、願望がそういう夢を見させたのだろう。


あれから何年経ったのだろう。

レーサーになりたいと言っていた友人は、レースをしばらく続けた後、
サラリーマンになった。
いち早く結婚したヤツは製氷機メーカーで出世をしている。
一人はすすきのでバーを営み、一人は地方公務員に。
一人はたしか年の離れた彼女と結婚した。
一人は結婚し3人の子供を育て、一人は神戸の震災を体験し、
一人はこうして物書きをしている。

あれから彼の夢を見ることはない。
そして私たちが再び集まることもなくなった。

Life is beautiful!Life is wonderful! byc0052630_15375963.jpg

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by maltsmam | 2005-08-18 15:22 | ◎more
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